日南市にある旧高橋源次郎家は、飫肥城下町の町家筋である本町通りのほぼ中央にあります。道路に面して屋根付き塀があり、寄せ棟の母屋は、茅葺の民家が瓦葺に転換していく初期の建築として価値が高いため、平成22年に国の登録有形文化財に指定されました。各部屋の襖や廊下の板戸には江夏英璋による絵が描かれているほか、山内多門によるものをはじめ、六曲一双の屏風が四点、二曲一隻が一点、襖が四面秘蔵されています。
　今回、高橋家のご理解と日南市のご協力の下、これらの作品を適切な保存環境に置くために燻蒸の上、当館収蔵庫に寄託して頂くことになりました。作品は、描かれた年代からすると奇跡的に状態のよい山内多門の「紅白梅図」や、最近になって複数の作例が確認されている江夏英璋の描いた襖絵「松林三賢人」など、都城の日本画家が含まれ、美術的にも郷土史的にも興味深いものがあります。
　歴史ある飫肥の貴重な文化財の一部を紹介することは、日南市の歴史文化に触れることだけでなく、都城地域の日本画家や美術を考える上でも意義深いことです。また、六曲一双の作品を同時に四点展示することは、当館にとって初めてであり、屏風、襖絵といった伝統的で豪華な美術表現の魅力を味わう機会となります。